アデリーペンギン

Suicaのペンギンなど、多くのペンギンを模したキャラクターのモデルとなっている、ペンギンの定番イメージな種です。

基本データ

■アデリーペンギンの容姿■

アデリーペンギンの写真
  • 和名:アデリーペンギン
  • 学名:Pygoscelis adeliae(ピゴスケリス アデリエア)
  • 属:アデリーペンギン属
  • 亜種:なし
  • 体長:70~75cm
  • 体重:4~6kg
  • 寿命:10年
  • 推定生息数:650万羽
  • 平均遊泳速度:7~14km/h
  • 最深潜水記録:180m
  • 渡り:4~9月
  • 産卵数:2卵
  • 性成熟:3歳
  • 主なコロニー:アデリ岬、テールアデリー、ロイズ岬、クロージア岬、ホプ湾
  • 主な食べ物:ハダカイワシ、イカ類

1年間の生活スケジュール

詳しい内容については「繁殖と子育て」の章で説明します。

ペンギンカレンダー ペンギンカレンダー(スマホ用)

名前の由来

名前の「アデリー」と学名の「アデリエア」は、共にフランスの南極探検家デュモン・デュルビル隊長の妻である「アデリー」さんに由来します。デュルビル隊長が上陸した南極の地はアデリーランドと名付けられ、そこで発見されたペンギンにもアデリーペンギンの名が与えられたのです。

生息数の動向

生息数は安定的に維持されて、増加傾向にあります。

生息地

南極大陸の沿岸部と大西洋の島々に分布しています。エンペラーペンギンと同じく南極半島以南の南極大陸で暮らす唯一のペンギンですが、アデリーペンギンの方がより広範囲に分布しています。

■アデリーペンギンの生息地■

アデリーペンギンの生息地

ヒナ

ヒナは全身を茶色がかった灰色の綿羽に覆われています。

巣立ちを迎えた亜成鳥は大人とよく似ていますが、目の周りの白いアイリングがなく、喉元の色は白色です。

■ヒナの容姿■

アデリーペンギンのヒナの写真

■亜成鳥の容姿■

アデリーペンギンの亜成鳥写真

潜水と採餌

25m程度の浅い潜水を繰り返して採餌を行います。平均潜水時間は1~2分ほどです。

オスとメスで食べ物が異なり、それに伴って泳ぐ海域も異なります。オスはコロニーの近海20kmの範囲で魚類を食べることが多く、メスはコロニーから100km以上離れた遠方でオキアミをよく食べます。

■潜水の様子■

アデリーペンギンの潜水の様子

繁殖と子育て

コロニーへの帰還

9月末から10月中旬にオスが先にコロニーへ帰還します。メスは少し遅れてコロニーに帰還し、オスの求愛に受け答えます。コロニーは南極大陸の内陸部にあり、海岸から30~100km程度は歩く必要があります。

つがいの絆

つがいの結びつきは弱く、昨年と同じパートナーとつがいになることはほとんどありません。

営巣

つがいが成立すると、オスが先に小石を積み始めて、巣作りが始まります。巣は小石を積み上げた簡素なもので、形もつくり手によってバラバラの形です。材料となる小石は営巣地にたくさんありますが、石を奪い合うケンカがあちこちで起こります。他の巣から小石を盗むこともよくあります。

■巣材の小石を盗む様子(ジェンツーペンギン)■

産卵と抱卵

メスは10月下旬から11月中旬に2つの卵を産みます。コロニーへの帰還から産卵までは絶食で過ごします。

卵の孵化に要する34日ほどの間、両親は交代して卵を温めます。先に抱卵するはオスの仕事で、メスは2週間ほどの採餌に出かけます。メスが帰ると、今度はオスが採餌に出かけ、1ヶ月に及ぶ絶食を終わらせます。その後は、両親が短いシフトで交代して抱卵します。

沿岸が海氷で塞がれるなど、氷の状況によっては海までの移動時間が増えるため、先に出かけたメスの帰りが遅れることもあります。あまりにもメスの帰りが遅い場合、オスは自分の命を守るため、卵を放棄して採餌に出かけざるを得ません。このように、氷の状況は繁殖成功率に大きな影響を与え、ひどい時にはコロニーのヒナが全滅することもあります。

孵化と保護期

34日ほどで卵が孵ると、ヒナは3~4週間ほど親の保護下で、天敵や体温の低下から守られて育ちます。この間、両親はヒナの保護役と採餌役を交代で受け持ちます。給餌は2羽のヒナに対して平等に行います。

■産まれたばかりのヒナ■

アデリーペンギンの産まれたばかりのヒナ

■給餌の様子■

アデリーペンギンの給餌の様子

クレイシ期

孵化後3~4週間ほど経つと、ヒナは親が抱けないほど成長し、以降1ヶ月ほどクレイシに加わります。ヒナの旺盛な食欲に応えるため、両親は同時に採餌へ出かけるようになり、2~3日おきに帰ってきてヒナにエサを与えます。

巣立ち

ヒナは孵化後45~55日ほどで巣立ちます。ヒナの2年後の生存率は6~8割ほどと言われています。

アデリーペンギンの繁殖成功率は良好で、2羽のヒナを巣立たせることも珍しくありません。

換羽

ヒナが巣立つとすぐに2~3週間ほどかけて換羽前の採餌旅行に出かけます。換羽は2月~3月頃に20日ほどかけて行い、その間に体重は3kg(体重の45%程度)ほど減少します。換羽中は風の避けられる氷山の斜面で群れを作ることが多いようです。

■換羽の様子■

アデリーペンギンの換羽の様子

メスの贈り物

繁殖期のアデリーペンギンにとって小石は非常に需要な存在です。それを感じられる観察エピソードを紹介します。

繁殖期の前半は、つがいが交代で採餌に出かけるので、コロニーは一人きりでパートナーの帰りを待つペンギンで溢れます。パートナーの目が届かないこのタイミングに、驚くべき方法でオスを誘惑したメスがいたのです。そのメスはおもむろに、つがいのオスが一生懸命作ったであろう自分の巣の小石を咥えると、パートナーの帰りを待つ別のオスの巣へ向かいました。そして、オスの目の前で小石を地面に置いたのです。巣材となる小石集めは夫婦間でしか行わない共同作業です。当然、オスは小石をプレゼントしたメスが自分に求愛していると思い込み、メスの誘惑に乗ってすぐさま交尾を始めました。交尾を終えると、メスは何事もなかったかのように自分の巣に戻り、パートナーの帰りを待ったのでした。

このようにアデリーペンギンにとって小石は、誘惑の品になるほど重要なものなのです。

表情豊か

アデリーペンギンは白いアイリングがあるためか、表情豊かな写真が撮れがちです。

表情豊かなアデリーペンギン 表情豊かなアデリーペンギン