ケープペンギン

世界中の動物園や水族館でよく見かけるペンギンです。

基本データ

■ケープペンギンの容姿■

ケープペンギンの写真
  • 和名:ケープペンギン(アフリカペンギン)
  • 学名:Spheniscus demersus(スフェニスクス デメルスス)
  • 属:フンボルトペンギン属
  • 亜種:なし
  • 体長:60~70cm
  • 体重:2.5~3.5kg
  • 寿命:10年
  • 推定生息数:7万羽
  • 平均遊泳速度:3~6km/h
  • 最深潜水記録:130m
  • 渡り:なし
  • 産卵数:2卵
  • 性成熟:3~4歳
  • 主なコロニー:セントクロワ島、ダッセン島、ロベン島、ボルダーズビーチ、マーキュリー島
  • 主な食べ物:カタクチイワシ、マイワシ

1年間の生活スケジュール

ケープペンギンは1年中繁殖する可能性があるため、このカレンダーは一例です。

詳しい内容については「繁殖と子育て」の章で説明します。

ペンギンカレンダー ペンギンカレンダー(スマホ用)

名前の由来

名前の「ケープ」は生息地である南アフリカの「ケープ地方」に由来します。学名の「デメルスス」はラテン語で「急降下」や「沈没」を意味し、ペンギンの潜水行動にちなんで名付けられました。

生息数の動向

生息数は危機的減少にあり、このままでは50年以内に野生のケープペンギンは絶滅すると言われています。1930年代には260万羽いたとされていますが、2009年には7万羽程度にまで数を減らしています。1994年のアポロ・シー号と2000年のトレジャー号の原油流出事故では、多くのケープペンギンが犠牲になったことで有名です。(※1)

飼育環境への適応能力が高く、世界で最も飼育数が多いペンギンと言われています。その数は4000羽を超え、野生の約5%に相当します。

※1:ボランティアによる保護活動で、事故の被害にあったケープペンギンの半数が救われています。

生息地

アフリカ南部とその周辺の島々で暮らしています。喜望峰を挟んで、西側は南緯24°のホームラスバード島が生息域の北限で、東側は南緯33°付近が生息域の北限です。

■ケープペンギンの生息地■

ケープペンギンの生息地

ヒナ

ヒナは頭から背中にかけて茶色、胸から腹にかけて白色の綿羽に覆われています。

巣立ちを迎えた亜成鳥は成長に似ていますが、頭に露出したピンク色の肌や、胸の黒いラインがないため、見分けるのは容易です。

■ヒナの容姿■

ケープペンギンのヒナの写真

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■亜成鳥の容姿■

ケープペンギンの亜成鳥写真

潜水と採餌

日中、10羽ほどの小さい群れになり、30m程度の浅い潜水を繰り返して採餌を行います。泳ぐ海域はコロニーの周辺40km程度の狭い範囲です。地域によっては10kmとさらに狭い海域しか泳がないという調査結果もあります。

■潜水の様子■

ケープペンギンの潜水

繁殖と子育て

1年中繁殖可能

ケープペンギンには他のペンギンのような決まった繁殖期がなく、1年中繁殖する可能性があります。ただし、コロニー毎に繁殖のピークが存在し、ナミビアのコロニーでは10~12月、南アフリカのコロニーでは4~5月と言われています。

1年に2回繁殖を試みるペアも1/3ほどいます。特にその年の最初の繁殖に失敗したつがいが、2回目の繁殖を試みることが多いようです。

コロニーへの帰還

定住性で年間を通してコロニーから離れることはありません。そのため、コロニーによって求愛を開始する時期はバラバラです。繁殖開始時期になるとオスが先に巣にやってきて、自分の巣を誇示してメスに求愛を行います。

つがいの絆

つがいの結びつきは維持される傾向が強く、一度つがいになると毎年同じパートナーと同じ巣で繁殖を行います。

営巣

営巣地は低木の下や茂みの陰など、遮蔽物があり、強い陽射しや天敵からヒナを守るのに有利な場所が好まれます。こういった場所は大抵、年長のつがいに占領されます。そのため、若いつがいは遮蔽物のない場所で巣作りをし、繁殖成功率は低くなる傾向にあります。

巣はフリッパーや足の爪を使って穴を掘り、草や葉、小枝を敷いて作ります。

産卵と抱卵

メスは2つの卵を2日空けて産みます。

卵の孵化に要する38日ほどの間、両親は毎日交代して卵を温めます。

■ケープペンギンの卵■

ケープペンギンの卵

孵化と保護期

卵は38日ほどで孵ります。ヒナは産まれてから2週間までは、綿羽の量と脂肪の蓄えが足りないため、体温を維持することができません。そのため、孵化後4~6週間ほど親の保護下で、天敵や体温の低下から守られて育ちます。なお、この時期は低体温による死亡や、天敵による捕食、親の不注意による巣の崩落など、ヒナの死亡リスクが非常に高いです。

クレイシ期

孵化後4~6週間日ほど経つと、ヒナは親が抱けないほど成長し、以降50日ほどクレイシに加わります。ヒナの旺盛な食欲に応えるため、両親は同時に採餌へ出かけるようになり、ヒナはクレイシで親の帰りを待ちます。

巣立ち

ヒナは孵化後80日ほどで巣立ちます。ヒナの2年後の生存率は15%ほどと言われています。

ケープペンギンの繁殖成功率は2卵のうち1羽が巣立つか、または全滅する程度です。

■巣立ち目前のヒナ■

ケープペンギンの巣立ち目前のヒナ

換羽

換羽開始の明確な時期はなく、個体によって換羽開始時期はバラバラで、1年中いつでも換羽する可能性があります。ただし、コロニー毎に換羽時期のピークはあり、4~5月、12月といった観察結果があります。換羽前後の採餌旅行には20~40日ほど要し、換羽は16日ほどかけて行います。この間に体重は2kgほど減少します。換羽中は海風を利用するために砂浜にいることが多いようです。

換羽と繁殖のサイクルが不規則なため、換羽と繁殖時期が重なったり、換羽前の採餌旅行に十分に時間をとれないこともあります。そういった状態になると換羽中の餓死など、生存リスクが高まります。

■換羽の様子■

ケープペンギンの換羽