キングペンギン
鮮やか模様が特徴で最も美しいペンギンと言われています。
基本データ
■キングペンギンの容姿■
- 和名:キングペンギン(オウサマペンギン)
- 学名:Aptenodytes patagonicus(アプテノディテス パタゴニクス)
- 属:エンペラーペンギン属
- 亜種:なし
- 体長:85~95cm
- 体重:12~16kg
- 寿命:20年
- 推定生息数:450万羽
- 平均遊泳速度:5~10km/h
- 最深潜水記録:344m
- 渡り:6~9月の冬の間
- 産卵数:1卵
- 性成熟:5歳
- 主なコロニー:クローゼー諸島、プリンスエドワード島、サウスジョージア島、ケルゲレン島、マックォーリー島
- 主な食べ物:ハダカイワシ、イカ類
1年間の生活スケジュール
キングペンギンの繁殖開始時期はばらつきが大きく、このカレンダーも一例に過ぎませんです。
詳しい内容については「繁殖と子育て」の章で説明します。
■繁殖に成功する周期■
■繁殖に失敗する周期■
名前の由来
名前の「キング」は発見当時世界最大のペンギンであったことに由来します。学名の「パタゴニクス」は南米のパタゴニアで発見されたことに由来します。
生息数の動向
生息数は安定的に維持されています。特にクローゼー諸島では過去45年間にわたり個体数が増加しています。
生息地
南極大陸をとりまく南緯45~55°の海域の島々で暮らしています。繁殖期以外は南極海域を広く回遊しています。
■キングペンギンの生息地■
ヒナ
ヒナは全身を濃い茶色の綿羽に覆われています。綿羽は非常に高密度でボリュームがあるため、巣立ちが近づく頃には親よりも体が大きく見えることもあります。そのような見た目であることから、キウイフルーツに例えられることも多々あります。
巣立ちを迎えた亜成鳥は大人とほぼ同じ見た目になりますが、耳周りの模様が白っぽい黄色単色である点など、大人と比べて模様の鮮やかさに欠けます。
■ヒナの容姿■
潜水と採餌
採餌の際は200m以上の深い潜水を行います。潜水時間も5~7分と長時間潜り続けます。また、冬場は2000km以上離れた海域までエサを探しに出かけることもあります。
同じエンペラーペンギン属のエンペラーペンギンと比べ、深い潜水を繰り返すのは食性の違いによるものです。キングペンギンはエンペラーペンギンよりもくちばしが細長いため、小型の魚をより好んで食べます。小魚でお腹を満たすには、より大量の魚を食べる必要があります。そのため、より広く深い海域までより多くのエサを探す必要が生じたのだと考えられています。
■潜水の様子■
繁殖と子育て
1年超えの子育て期間
キングペンギンの子育て期間は13~14ヶ月と1年以上に及びます。これは全てのペンギンの中で最長です。
そのため、他のペンギンのように毎年決まった時期に産卵ができず、産卵周期がズレて遅れてゆきます。ただ、ズレれた周期では、ヒナが幼い状態で厳しい冬を迎えるため、繁殖を成功させることができません。そして、その翌年は産卵周期のズレが戻るので、再び繁殖に有利な年となります。このように、キングペンギンの繁殖は通常2年おきに成功の年と失敗の年を繰り返しているのです。
また、ごく少数ですがズレた周期での繁殖は控えて、正常な周期となる3年に2回だけ産卵を行い、繁殖を毎回成功させるつがいもいるようです。
なぜ大多数のつがいがズレた周期でも繁殖を試みるのかは明らかになっていませんが、一説によると周期のズレを気にせず繁殖を試みた方が、ペンギンにとって使うエネルギーが少なくて楽という考え方もあるようです。
■産卵周期のずれ■
コロニーへの帰還
子育て周期のズレにより、一斉にコロニーに帰還する明確な時期はありません。
オスは繁殖のためにコロニーに戻ると、首を伸ばしてくちばしを垂直にし、鳴き声をあげてメスに求愛を行います。パートナーを選ぶ選択権はメスにあります。
■コロニー内の密度のイメージ■
つがいの絆
つがいの結びつきはほとんど維持されません。キングペンギンは毎年異なるパートナーとつがいになります。
営巣
キングペンギンは巣を作りません。巣の代わりに自分の脚の上に卵を置いて温めます。
同じ巣を持たないエンペラーペンギンと異なり、キングペンギンのなわばり意識は非常に強いです。コロニー内に自分だけの定位置を持ち、そこからくちばしの届く0.46m程度の範囲をなわばりとします。また、オスは次の繁殖時も昨年と同じ定位置に戻ろうとします。
産卵と抱卵
メスは卵を1つだけ産みます。
卵の孵化に要する50日ほどの間、両親は15日おきに交代で抱卵と採餌に出かけます。
孵化と保護期
50日ほどで卵が孵ると、ヒナは5~6週間ほど親の保護下で、天敵や体温の低下から守られて育ちます。
■給餌の様子■
クレイシ期
孵化後5~6週間日ほど経つと、ヒナは親が抱けないほど成長し、以降10ヶ月ほどクレイシに加わります。
ヒナにとってクレイシ期の最大の試練は越冬です。それまで定期的に給餌を行っていた両親が、冬になるとエサを探しに長期間遠方の海へ出かけてコロニーからいなくなります。両親は月に1回程度のペースでコロニーに帰還しますが、その間ヒナは空腹状態が続き、冬を越す頃には体重が半減します。そのため、2月を超える遅い時期に生まれるなどして十分に脂肪を蓄えていないヒナは、ほとんど冬を越すことができません。このように、キングペンギンは越冬して子育てをする唯一のペンギンです。
ちなみに、動物園で暮らすキングペンギンの多くは、冬を越せる見込みのないヒナを捕獲して育てた個体です。
巣立ち
冬を超えて気温が上がってくると、両親はコロニーに帰還して再びヒナに頻繁に給餌を行います。ヒナの体重はぐんぐんとのびてゆき、孵化後1年で巣立ちを迎えます。ヒナの2年後の生存率は40~80%ほどと調査結果によって差があります。
キングペンギンの繁殖成功率はつがい10組中3組が繁殖に成功する程度で、全てのペンギンの中で最低の繁殖成功率です。
換羽
繁殖に1年以上を費やすため、換羽は2年に1回行います。また、繁殖前に換羽を済ますのも他のペンギンと異なる点です。
換羽時期はヒナの成長次第で変化しますが、12~1月に換羽する個体が多いと言われています。換羽に要する期間は30日ほどで、この間に体重は半減します。換羽中は海岸で群れをなして立っています。
■換羽の様子■
過酷なクレイシ
クレイシをつくるペンギンにとって、それを形成する理由はより多くのヒナが生き残るためです。しかし、キングペンギンにとってのクレイシは、お互いが生き残るためではなく、より強いヒナが生き残りやすくするために形成されます。大きくて強いヒナほどクレイシの中心に入りやすくなり、天敵や悪天候から守られるのです。また、ヒナ同士も中心に入るために頻繁にケンカを行います。
なわばり意識
キングペンギンはなわばり意識が強いため、数万羽が暮らすコロニーではケンカが頻繁に発生します。特にヒナが孵化後5~6週目までの保護期では、争いが激化し、親鳥は多くのエネルギーをケンカに割く必要があります。海からヒナのもとへ戻る際も、多くの親鳥たちの隙間を通り抜ける必要があるので、荒ぶる親鳥たちの猛攻を耐え凌がなければいけません。
コロニーの中央ほどケンカは激しさを増しますが、コロニー中央が繁殖に有利である科学的理由は判明しておらず、キングペンギンたちがコロニー中央に執着する理由は未だに不明です。