マカロニペンギン

日本では箱根園水族館と海響館の2つの水族館でしか会えませんが、最も生息数の多いペンギンです。

基本データ

■マカロニペンギンの容姿■

マカロニペンギンの写真

※現在は仙台うみの杜水族館で飼育していません。

  • 和名:マカロニペンギン(オウサマペンギン)
  • 学名:Eudyptes chrysolophus(エウディプテス クリソロフィス)
  • 属:マカロニペンギン属
  • 亜種:なし
  • 体長:65~75cm
  • 体重:4~5kg
  • 寿命:15年
  • 推定生息数:2000万羽
  • 平均遊泳速度:7.5km/h
  • 最深潜水記録:163m
  • 渡り:4~10月
  • 産卵数:2卵
  • 性成熟:6歳
  • 主なコロニー:サウスジョージア島、ケルゲレン島、ハード島、マクドナルド諸島、クローゼー諸島、マリオン島
  • 主な食べ物:オキアミ、魚類

1年間の生活スケジュール

詳しい内容については「繁殖と子育て」の章で説明します。

ペンギンカレンダー ペンギンカレンダー(スマホ用)

名前の由来

名前の「マカロニ」は、18世紀のイギリスで使われた「華美で人目を引く」という意味合いの言葉に由来し、鮮やかな金色の飾り羽にちなんで名付けられました。学名の「クリソロフィス」は「金色の冠羽」という意味で、こちらも飾り羽由来です。

生息数の動向

生息数は全てのペンギンの中で最多ですが、著しい減少傾向にあります。そのためレッドリストは1段階引き下げられ絶滅危惧II類となりました。

生息地

南極半島の東側の島々に大規模コロニーがあるのをはじめ、亜南極海域の広範囲の島々で暮らしています。また、マカロニペンギン属の中では生息域が最も南に広がる種でもあります。飼育環境にも適応し、世界中の多くの動物園で見ることができます。

■マカロニペンギンの生息地■

マカロニペンギンの生息地

ヒナ

ヒナは頭から背中にかけて濃い灰色、胸から腹にかけて白色の綿羽に覆われています。なお、ヒナの段階では近縁種のロイヤルペンギンのヒナと見分けがつきません。

巣立ちを迎えた亜成鳥は大人とほぼ同じ見た目になりますが、飾り羽は小さくまばらです。

■ヒナの容姿■

マカロニペンギンのヒナの写真

By franek2, CC BY-SA 3.0, https:/commons.wikimedia.orgimgimgclassificationwimgimgclassificationindex.php?curid=55847034

■亜成鳥の容姿■

マカロニペンギンの亜成鳥写真

By Liam Quinn - Flickr: Macaroni Penguin at Cooper Bay, South Georgia, CC BY-SA 2.0, https:/commons.wikimedia.orgimgimgclassificationwimgimgclassificationindex.php?curid=15735419

潜水と採餌

30~70m程度の潜水を繰り返して採餌を行います。平均潜水時間は2分ほどです。繁殖期には1日12時間以上採餌に費やした記録もあります。

渡りの期間中は沖合を非常に広範囲に遊泳し、移動距離の合計は平均1万キロを越えるほどです。

繁殖と子育て

コロニーへの帰還

10月中旬から11月上旬にオスが先にコロニーに帰還し、昨年の巣を確認してメスの帰還を待ちます。メスの帰還はそれから1週間ほど遅れます。

つがいの絆

つがいの結びつきは維持される傾向が強く、8割のつがいは昨年と同じパートナーと繁殖します。

営巣

巣は地面に浅い穴を掘ってつくり、周囲に小石や岩のかけらを並べます。

産卵と抱卵

メスはコロニーに帰還してから2週間ほどで、2~3日あけて2つの卵を産みます。1つ目の卵は90gほどなのに対し、2つ目の卵は150gほどで、差は倍ほどあります。コロニーへの帰還から産卵までは絶食で過ごします。

卵の孵化に要する40日の間、両親は交代で卵を温めます。最初の2週間はオスが抱卵を担当し、メスは2週間の絶食を終えるため採餌に出かけます。メスが巣に帰ると抱卵を引き継ぎ、今度はオスが採餌に出かけます。オスは1ヶ月ほどの絶食からようやく開放されます。

通常、1つ目の卵は2つ目の卵を産んだ際に破棄されます。2つ目の卵が失われた場合は1つ目の卵を育てることもあります。

孵化と保護期

35~40日ほどで卵が孵ると、ヒナは1ヶ月ほどオスの保護下で、天敵や体温の低下から守られて育ちます。この間オスは絶食状態で、ヒナへエサを与えるのはメスの役割です。

クレイシ期

孵化後1ヶ月ほど経つと、ヒナは親が抱けないほど成長し、以降1ヶ月ほどクレイシに加わります。オスは1ヶ月の絶食を終えるため、2週間ほど採餌に出かけます。その間もメスは1羽でヒナへの給餌を続けます。

巣立ち

ヒナは孵化後60~70日ほどで巣立ちます。巣立ったヒナが繁殖可能になるまでは6年ほど掛かり、これはペンギンの中で最長です。

マカロニペンギンの繁殖成功率は低く、大多数のつがいはヒナを巣立たせることができません。

換羽

ヒナが巣立つと2週間ほどかけて換羽前の採餌旅行に出かけます。換羽は3月頃から2週間ほどかけて行い、その間に体重は4割ほど減少します。換羽の中のつがいは、仲良く巣のある場所に並んで立つことが多いです。

新しいパートナーは換羽中に探す?

マカロニペンギンは換羽期をパートナーと共に過ごす特徴があります。一見すると微笑ましい光景ですが、この時一緒に過ごすのは、必ずしもその年を共にしたパートナーとは限らないことが明らかになっています。

調査結果によると、その年に営巣したつがいと分かれて換羽した個体のうち、3/4は分かれた相手と再び営巣することはありませんでした。また、新たなつがいと営巣した個体のうち、2/3は昨年の換羽期を共に過ごしていたことが判明しています。

つまり、マカロニペンギンにとって換羽期を共に過ごす相手は、翌年の営巣を共に乗り越えられると見定めた相手だったのです。もちろん、今年のパートナーと来年も営巣を行えると判断した場合は、今年のパートナーと換羽期を共に過ごします。

オスはメスよりも巣が大事?

コロニー内の巣はオスにとって自分のなわばりで、最優先で確保するものです。他のペンギンが巣の近くを通過するだけで攻撃をすることからも、巣の重要度が分かります。ただ、必要以上に巣に執着することは悪い結果をもたらすこともあります。

メスと離婚したオスにとって、コロニーに帰還したタイミングが新しいパートナーを探す最後のチャンスです。しかし、巣の確保にあまりにも必死になり過ぎて、メスへの求愛が疎かになる個体が少なくないのです。そのためか、オスの離婚翌年の再婚率は6割ほどと、低い水準に留まっているのです。