マゼランペンギン

飼育の容易なケープペンギンやフンボルトペンギンがワシントン条約で輸出規制となってからは、マゼランペンギンを飼育する動物園や水族館が増えています。

基本データ

■マゼランペンギンの容姿■

マゼランペンギンの写真
  • 和名:マゼランペンギン
  • 学名:Spheniscus magellanicus(スフェニスクス マゲラニクス)
  • 属:フンボルトペンギン属
  • 亜種:なし
  • 体長:65~70cm
  • 体重:3.5~5kg
  • 寿命:10年
  • 推定生息数:350~400万羽
  • 平均遊泳速度:5~8km/h
  • 最深潜水記録:97m
  • 渡り:4~8月
  • 産卵数:2卵
  • 性成熟:3歳
  • 主なコロニー:プンタトンボ、サンロレンソ、ヴィルヘネス岬、マグダレーナ島、フォークランド諸島
  • 主な食べ物:カタクチイワシ、イカ

1年間の生活スケジュール

詳しい内容については「繁殖と子育て」の章で説明します。

ペンギンカレンダー ペンギンカレンダー(スマホ用)

名前の由来

名前の「マゼラン」と学名の「マゲラニクス」は、共に航海者フェルディナンド・マゼランが世界一周の航海中で見つけたペンギンであることに由来します。ペンギンの発見については航海記録をまとめた「最初の世界一周航海記」にも記されており、これが世界で初めてペンギンについて記した出版物となりました。

生息数の動向

生息数は安定的に維持されています。

生息地

フンボルトペンギン属の中では最も寒冷地に生息しており、アルゼンチンに63ヶ所、チリに13ヶ所のコロニーが確認されています。毎年4~8月にかけて渡りを行い、ペルーやブラジル中部の海岸まで北上します。なお、フンボルトペンギン属で渡りを行うのはマゼランペンギンのみです。飼育環境への適応力が高く、世界中の動物園で飼育されています。

■マゼランペンギンの生息地■

マゼランペンギンの生息地

ヒナ

ヒナは頭から背中にかけて茶色、胸から腹にかけて白色の綿羽に覆われています。

巣立ちを迎えた亜成鳥は成長に似ていますが、頭に露出したピンク色の肌や、胸の黒いラインがないため、見分けるのは容易です。

■ヒナの容姿■

マゼランペンギンのヒナの写真

Guglielmo Celata - originally posted to Flickr as Pinguini, CC 表示-継承 2.0, https:/commons.wikimedia.orgimgimgclassificationwimgimgclassificationindex.php?curid=3873311による

■亜成鳥の容姿■

マゼランペンギンの亜成鳥写真

潜水と採餌

群れでコロニー周辺の16~40kmの範囲を泳ぎ、45m以下の浅い潜水を繰り返して採餌を行います。一回の平気潜水時間は2分程度です。近海にエサが少ない場合は、300km程度の沖合で採餌した記録もあります。

■群れで泳ぐイメージ■

マゼランペンギンの群れで泳ぐイメージ

■潜水の様子■

マゼランペンギンの潜水

繁殖と子育て

コロニーへの帰還

他のフンボルトペンギン属と異なり同調性が高く、同じ時期に子育てを行います。

9月初旬にオスが先にコロニーへ帰還します。メスは数日遅れてコロニーに戻り、メス同士でオスを巡ってケンカします。繁殖期の始めはコロニーのいたる所でケンカが発生し、傷だらけのペンギンで溢れかえります。

■コロニーの密度のイメージ■

マゼランペンギンのコロニーの密度

つがいの絆

つがいの結びつきは維持される傾向が強く、一度つがいになると毎年同じパートナーと繁殖を行います。

営巣

巣は砂地や砂利に深い穴を掘って作ります。岩陰や木陰などの遮蔽物がある場所が好まれ、オスは巣の場所を巡って激しくケンカします。ケンカは当たり前に流血を伴い、重症の可能性もあるほど本格的なものです。

産卵と抱卵

メスは10月頃に2つの卵を2日空けて産みます。この頃になるとケンカはなくなり、コロニーには平和が訪れています。また、オスはコロニーへの帰還から産卵までは絶食で過ごします。

卵の孵化に要する40日ほどの間、両親は交代で卵を温めます。先に抱卵するのはメスの仕事で、オスは3週間ほど採餌に出かけ、絶食を終わらせます。オスが帰ると今度はメスが採餌に出かけ、短い絶食期間を終わらせます。以降は短期間で抱卵を交代します。

孵化と保護期

40日ほどで卵が孵ると、ヒナは30日ほど親の保護下で、天敵や体温の変動から守られて育ちます。

クレイシ期

孵化後30日ほど経つと、ヒナは親が抱けないほど成長し、以降1ヶ月ほどクレイシに加わります。ヒナの旺盛な食欲に応えるため、両親は同時に採餌へ出かけるようになり、ヒナはクレイシで親の帰りを待ちます。

巣立ち

ヒナは孵化後70~80日ほどで巣立ちます。ただし、個体数の多い大規模コロニーでは、1羽あたりのエサの量が少なくなるため、巣立ちまで120日ほどかかる場合もあるようです。ヒナの2年後の生存率は3~4割ほどと言われています。

マゼランペンギンの繁殖成功率は4~5割ほどです。

換羽

ヒナが巣立つと2~3週間ほどかけて換羽前の採餌旅行に出かけます。換羽は3月に20日ほどかけて行い、その間に体重は4kgほど、率にして4割ほど減少します。換羽中はコロニーの海岸の波打ち際に密集することが多いようです。

■換羽を控え羽毛が含む■

マゼランペンギンの換羽を控え羽毛が含む様子

■換羽の様子■

マゼランペンギンの換羽の様子