スネアーズペンギン

攻撃的な種が多いマカロニペンギン属の中ではもっとも温和な性格のペンギンです。

基本データ

■スネアーズペンギンの容姿■

スネアーズペンギンの写真

lin padgham - originally posted to Flickr as Snares crested penguins, CC 表示 2.0, https:/commons.wikimedia.orgimgimgclassificationwimgimgclassificationindex.php?curid=3888753による

  • 和名:スネアーズペンギン(ハシブトペンギン)
  • 学名:Eudyptes robustus(エウディプテス ロブストゥス)
  • 属:マカロニペンギン属
  • 亜種:なし
  • 体長:53~60cm
  • 体重:2.6~3.5kg
  • 寿命:11年
  • 推定生息数:8万羽
  • 平均遊泳速度:データなし
  • 最深潜水記録:120m
  • 渡り:4~8月
  • 産卵数:2卵
  • 性成熟:6歳
  • 主なコロニー:スネアーズ諸島
  • 主な食べ物:甲殻類、頭足類

1年間の生活スケジュール

詳しい内容については「繁殖と子育て」の章で説明します。

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名前の由来

名前の「スネアーズ」はスネアーズ諸島の固有種であることに由来します。学名の「ロブストゥス」は「力強い」という意味で、大きくて頑丈そうに見えるくちばしに由来します。また、名前の別名である「ハシブト」も太いくちばしを由来とします。

生息数の動向

1968年の調査開始以降、個体数は安定的に維持されています。

生息地

ニュージーランドの南方にあるスネアーズ諸島の固有種で、全てのペンギンの中で最も生息域が小さいペンギンです。その面積は3.5km²で、日本最小の市である埼玉県蕨市(5.1km²)よりも狭いです。なお、次いで生息域が小さいペンギンはマックォーリー島の固有種のロイヤルペンギンがいますが、スネアーズ諸島の面積はマックォーリー島の1/40であり、スネアーズペンギンの生息域の小ささが際立ちます。

■スネアーズペンギンの生息地■

スネアーズペンギンの生息地

■スネアーズ諸島とマックォーリー島の比較■

スネアーズ諸島とマックォーリー島の比較

ヒナ

ヒナは頭から背中にかけて茶色、胸から腹にかけて白色の綿羽に覆われています。

巣立ちを迎えた亜成鳥は大人とほぼ同じ見た目になりますが、飾り羽は短くわずかに後方に伸びるにすぎません。

潜水と採餌

日中、12羽ほどの群れになり、25m程度の浅い潜水を繰り返して採餌を行います。他の海鳥が混じり合う採餌集団に加わることもあります。

繁殖と子育て

コロニーへの帰還

9月の上旬にオスが先にコロニーへ帰還します。メスの帰還はそれから1周間ほど遅れます。他のマカロニペンギン属と比べて温厚な性格ですが、コロニーへ帰還したばかりのオスは、メスや巣を巡ってケンカをすることがあります。

つがいの絆

つがいの結びつきは維持される傾向が強く、多くのつがいが昨年と同じパートナーと繁殖を行います。

営巣

営巣地は木に覆われた木陰が好まれます。巣は浅いクレーター状で、体を地面に押し当てならが回転させて浅い穴を掘り、小石や小枝、泥などで周囲を囲って作ります。

産卵と抱卵

メスは9月下旬に2つの卵を産みます。1つ目の卵は100gほどなのに対し、2つ目の卵は130gほどで、3割ほど大きい傾向にあります。コロニーへの帰還から産卵までは絶食で過ごします。

卵の孵化に要する1ヶ月の間、両親は交代で卵を温めます。最初の10日間ほどは頻繁に交代し、その後オスが12日ほど採餌に出かけ、卵はメスが温め続けます。ここまでオスは40日ほど絶食状態です。オスが帰ると、今度はメスが採餌に出かけ、オスが抱卵を引き継ぎます。メスは45日にも及ぶ絶食からようやく開放されます。なお、メスが帰ってからも抱卵はオスが引き続き行います。

孵化と保護期

1ヶ月ほどで卵が孵ると、ヒナは3週間ほどオスの保護下で、天敵や体温の低下から守られて育ちます。この間オスは絶食状態です。メスは毎日採餌に出かけ、ヒナにエサを与えます。なお、メスは2つ目の大きい卵から生まれたヒナに優先的にエサを与えるため、1つ目の卵のヒナは1週間ほどで餓死します。

クレイシ期

孵化後3週間ほど経つと、ヒナは親が抱けないほど成長し、以降50日ほどクレイシに加わります。クレイシの規模は30羽程度です。両親は同時に採餌に出かけるようになりますが、ヒナへの給餌は主にメスが行います。オスは3週間の絶食で失われた体力の回復に勤しみます。クレイシ期の終わりに近づくと、ヒナは小さな集団で海岸へ行き、水へ飛び込むようになり、巣立ちに備えます。

巣立ち

ヒナは孵化後70日ほどで巣立ちます。ヒナの2年後の生存率は3割ほどと言われています。

スネアーズペンギンの繁殖成功率は2組のつがいの内1組が1羽巣立たせる程度です。

換羽

ヒナが巣立つと70日ほどかけて換羽前の採餌旅行に出かけます。換羽は3月下旬から3~4週間ほどかけて行い、その間に体重は半減します。多くはコロニーのあるスネアーズ諸島で換羽しますが、ニュージーランドやオーストラリア南部で換羽する個体もいます。