ペンギンの体の特徴

世界には18種類の多様なペンギンが暮らしていますが、全種に共通する特徴がいくつもあります。

体長

ペンギンの体長は「くちばしの先端」から「尾羽の端」までの長さです。正確に体長を測るには、ペンギンを地面に寝かせて、くちばしから尾羽までを一直線上に並べる必要があります。そのため、立ち姿は数値上の体長よりも短く見えます。

具体的な例として、尾羽が長いジェンツーペンギンの体長はペンギンの中で3番目の大きさですが、地面から頭までの立ち姿での長さは、キガシラペンギンに抜かれて4番目になると言われています。

ペンギンの中で一番大きいエンペラーペンギンの体長は130cmです。反対にペンギンの中で一番小さいコガタペンギンの体長は40cmです。その差は約3倍にもなります。

■体長の測り方■

ペンギンの体長の測りたか

体重

ペンギンは1年の中で体重が大きく増減する生き物です。子育て中や換羽中(※1)は絶食をするため、一ヶ月程度の短期間に体重が3~5割ほど減ってしまいます。また、それらの時期の前は、エネルギーを蓄える必要があるため、食いだめをして、体重が普段よりも増えています。このような体重の頻繁な変動は、ペンギンの過酷な生活を色濃く示していると言えます。

ペンギンの中で一番重いエンペラーペンギンの体重は35kgほどです。反対にペンギンの中で一番軽いコガタペンギンの体重は1kgほどです。その差は約35倍にもなります。

※1:全身の羽毛が生え換わる生理現象

■体重測定のイメージ■

体重測定のイメージ

からだの共通する特徴

ペンギンは種によって異なる特徴的な見た目をしていますが、共通する特徴もあります。それは「体の模様」と「フリッパー」です。

体の模様は後頭部から背中にかけて黒系の色で、腹部は白色です。この配色は海を泳ぐ際の保護色の効果があり、上から見ると海底の黒色と同化し、下から見ると海面を照らす陽の光と同化します。例外として、脚の色が違ったり、体に目立つ装飾がある種もいますが、その差はごく一部で、あくまでも主要な色は黒と白です。

フリッパーは翼が進化した器官でペンギン以外の鳥類には見られません

■保護色効果のイメージ(お腹)■

海面の保護色となるお腹の色の比較

■保護色効果のイメージ(背中)■

海底の保護色となる背中の色の比較

フリッパー

ペンギンの翼は鳥類の翼と形状や役割が大きく異なります。そのため、「フリッパー」という名称で明確に区別されます。

フリッパーは翼がオールのような形に大きく変化した器官で、鳥類の翼のような柔らかさはなく非常に硬いです。ペンギンはフリッパーを使い、水をかき分けて泳ぐ際の推進力を生み出しています。ペンギン以外にも潜水する鳥はいますが、翼ではなく足を使って泳いでいるため、ペンギンのような力強い潜水はできません。

フリッパーは陸上でも役立っています。歩く際のバランス取りに使われる他、身の危険が迫った際はフリッパーを前足代わりにして、素早く陸上を走り抜けます。また、フリッパーで喧嘩相手を力強く叩いたりもします。フリッパーの打撃力は非常に強く、本気で叩かれると人間の羽は骨折すると言われています。

■翼とフリッパー■

翼とフリッパー

■前足として利用されるフリッパー■

前足代わりにフリッパーを使う様子

■フリッパーと手の比較■

フリッパーと手の比較

■フリッパーで泳ぐペンギンたち■

■ケンカに使われるフリッパー■

くちばし

ペンギンのくちばしの長さや太さは食べるエサによって変化します。魚類をよく食べる種は細長い形状をしており、オキアミなどの甲殻類をよく食べる種は硬い短く太い形状をしています。

■食性によるくちばしの差■

食性によるくちばしの差

口の中

ペンギンの口には鳥類と同じように歯がありません。代わりに舌と上あごにギザギザの突起が何本も生えています。この時は口の奥方向に向かっていて、食べた魚の鱗を捉えて、簡単には逃げられないようにする役割があります。この突起があるためペンギンは必ず魚を頭の方から食べます。尾びれの方から食べると突起に刺さりうまく飲み込むことができないのです。

■無数の突起が広がる口内■

ギザギザの突起が無数に生える口の中

ペンギンの足は非常に短く見えます。しかし、骨格を見ると(※2)、膝から上は胴体の中に隠れていることが分かります。胴体に隠れた膝は90度に曲がっていて、人間でいうと空気椅子の状態で立っているのです。とても奇妙な足の構造ですが、胴体から出る足の長さを減らして、泳ぐ際の水の抵抗を減らせる利点があります。

ペンギンは水中でこの小さな足をピッタリとくっつけて、舵として使っています。

歩く際は重心が前寄りになるため、二足歩行でも転びにくくなる利点もあります。ペンギンが独特なよちよち歩きをするのも、この足の構造のためです。

ペンギンの奇妙な足の構造は、優れた潜水能力と、陸上での歩行を両立するための最善策と言えるのです。

※2:骨格の写真は「8. 骨格」の章を参照してください。

■潜水時における脚の利用法■

水泳時に足の使われ方

■特徴的なよちよち歩き■

骨格

ペンギンの骨は鳥類と比べて密度が高くて重く、胸骨が頑丈です。

鳥類の骨は空を飛ぶために強度を保ちつつ軽い必要があります。そのため、骨の内部に大量の細かい空洞がある多孔質と呼ばれる構造をしており、密度が低く非常に軽いです。一方で、ペンギンは空を飛ぶ必要がないため、骨を軽くする必要もありません。ペンギンの骨は非常に高密度かつ重く頑丈で、泳ぎに有利な構造となっています。

ペンギンの骨の重さは同じ大きさの鳥類と比べると一目瞭然です。体長70cm程度のタカ類の体重は2kgほどですが、同じ体長のアデリーペンギンの体重は5kgもあります。

頑丈な骨格で守れているペンギンですが、胸部は非常に強固な胸骨でさらに守りを固めています。これは潜水時の水圧により、胸部が潰れてしまうのを防ぐ役割があります。

また、頑丈な骨格と豊富な皮下脂肪で守れているため、ペンギンは高所からの落下にも強いです。

■ペンギンの骨格■

ペンギンの骨格

■体長の2倍の高さから落下■

体長の2倍の高さから落下