ペンギンの進化の歴史
ここではペンギンの進化の歴史について、ペンギンが南半球にしか生息していない理由も交えて説明します。
全てのペンギンの起源
絶滅種を含めた全てのペンギンの共通祖先と言える「始祖ペンギン」の化石は、約7000万年前のゴンドワナ大陸で発見されています。始祖ペンギンは重く頑丈な骨格を持っていたので、空は飛べず、泳ぎを得意とした潜水性の鳥だったと考えられています。これは全てのペンギンの化石に共通する特徴で、現存するペンギンまで受け継がれています。
現存するペンギンの起源
ペンギンは始祖ペンギンから進化を繰り返し、種を増やしました。しかし、多くの種は既に絶滅しています。現生するペンギンの共通祖先と言える「現生始祖ペンギン」は、始祖ペンギンから進化した、たったの1種に絞られます。現生始祖ペンギンからエンペラーペンギン属の共通祖先が進化したのを皮切りに、その他の種も進化が始まったと考えられています。
■ペンギンの進化の系統図■
原始のコガタペンギン
現生するペンギンの中にコガタペンギンと呼ばれる種がいます。彼らはエンペラーペンギン属の共通祖先が現生始祖ペンギンから進化するよりも昔に、現生始祖ペンギン(※1)から進化しました。そのため、原始的なペンギンの形質を色濃く残しています。最も顕著なのは歩く姿です。他のペンギンは直立二足歩行を行うのに対し、コガタペンギンは前傾姿勢で歩きます。ペンギンが直立二足歩行を行うのは、潜水に適した骨格に進化した結果だと考えられているので、前傾姿勢のコガタペンギンは進化の初期段階の姿をしているのです。
※1:正確には現生始祖ペンギンから進化した、エンペラーペンギン属とアデリーペンギン属を除く、現生ペンギンの共通祖先
■コガタペンギンとフンボルトペンギンの比較■
南半球にしかいない理由
ペンギンは南半球にしか生息していません。(※2)また、化石も南半球でしか発見されておらず、産出場所も現生ペンギンの生息域とほぼ一致しています。これは、始祖ペンギンの暮らしていたゴンドワナ大陸の地域が大陸移動によって、現在のオーストラリア、ニュージーランド、南極、南アフリカといった、南半球の各地域に分かれたためです。
しかし、海を渡れるペンギンが、生息域を北半球に広げなかったのは不思議です。その理由は確定されていませんが、有力な説としては、南極大陸から発生する寒流の豊富な食料に依存しているため、北半球へ進出できなかったと考えられています。
※2:例外として、ガラパゴスペンギンの生息域は赤道直下で、一部地域は北半球にもはみ出ている
■ペンギンの繁殖地と寒流の相関■
いつ鳥から進化したのか
ペンギンが鳥の仲間であることは疑いようのない事実です。しかし、鳥類の進化の歴史の中で、ペンギンがどの鳥から進化したのかは、確定的な証拠がありません。というのも、「鳥の翼」と「ペンギンのフリッパー」それぞれの中間的な性質を持った鳥類の化石が未だに未発見だからです。一般的には、空を飛べて海も潜れるミズナギドリなどの海鳥から進化したと考えられています。